清明節を詠んだ詩の中で、もっともすぐれているのは、唐の詩人杜牧の『清明』をおいて他にない。
清明時節雨紛々 清明の時節は雨紛紛
路上行人欲斷魂 路上の行人魂を斷たんと欲す
借問酒家何処有 借問す酒家は何処に有りやと
牧童遙指杏花村 牧童遙かに指さす杏花村
時は清明、気候はしだいに暖かくなってきたが、ただ春雨がしとしと降る時には、やはり寒さがこたえる。人は名酒の産地杏花村に思いを馳せ、一杯やって身體を暖めたいと願う。この詩は流暢な調子と美しい言葉で、絵に見るように清明における江南(揚子江以南)の風景を描いており、読む者に身をその地に置いたような感を抱かせ、限りない味わいを人々に抱かせる。この詩は広く伝わっており、いろいろな面白い話がある。たとえば、ある者はこの詩の中の句を置き換えて、一節の詞に変えた。
清明時節の雨、路上の行人紛々たり、魂を斷たんと欲す。借問す酒家は何処にありやと、牧童有り、遙かに杏花村を指さす。
またある者は、この詩を寸劇の一部に改編した。
清明の時節。雨紛々。路上。
行人:(魂を斷たんと欲して)「借問す、酒家はいずれの処にかある?」
牧童:(遙かに指さして)「杏花村」
これらから見ても、この詩はじつに趣のあるすぐれた作品であることがわかる。
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