▼給與生活者の収入を決定するのはどんな要因か
世界的な通貨の動きを研究する學者の間には、「世界の支配者」としての米ドルによる後発國家に対する搾取行為に気をつけなければならないと呼びかける聲がある。ラテンアメリカや東南アジア、ロシア、日本はみな米ドルがけしかけた「通貨戦爭」で敗北を喫している。このことも「中所得國の罠」を考える上で重要な背景の一つになる。
しかし、この點に注目する研究者は少ないようである。彼らは歐米の先進國で、社會人口の80%を占める中等収入階層が社會の中堅的地位として見なされ、「政治の後衛」「消費の前衛」と呼ばれていることにしか目がいっていない。中國もそれら先進國を手本とし、「オリーブ型社會」を構築すべきなのだろうか。ここには多くの前提條件が見落とされていると言わざるをえない。
中國の浙江省は國內では「先進開発地區」に屬する。2009年一人あたりのGDPが6490ドルに達し、中國きっての経済成長水準となっている。地元の研究者が実際狀況と合わせて行った調査によると、同省の中等収入家庭(3人家族とする)の年収は6.6萬元から17.1萬元の間だった。またサンプリング調査の結果として、この収入層は計1569.6萬人で、全省人口の30.66%であることが示された。この數字は他の先進國の水準にほど遠い。
中等収入層がなかなか成長しない主な要因は、農民や労働者が「上へ向かう流動的な空間が圧迫されている」ことにあると調査擔當者は考えている。これに加えて就業難も、中等収入層が新舊交代の過程で受けている一時的な不遇を助長している。
蔡昉氏が述べるように、一部の學者は表面的な現象だけを見て、「中所得國の罠」の本質を理解していないのである。それでは、結局のところどんな要因が中國の給與生活者の収入を決定しているのだろうか。