中國政府は海南省を國際的な大観光地に変身させるというウルトラ級のビジョンを打ち出した。私は子供が老夫婦のために海南省三亜市にセカンドハウスを購入してくれたこともあって、ほとんど毎年のように「リゾートライフ」を楽しむという一家のコンセンサスにいやいやながら同意してのこのこと出掛けていっているが、たしかに景観としては、「中國のハワイ」といわれるくらいのレベルのあるところだが、私は北京の國立図書館で、ジャック?デリダ、ミシェルフーコー、上野千鶴子さんらの著書を読みたいので、いろいろ屁理屈をこねて行かないようにしてきたが、やはり中國人特有の「家族主義」への歩み寄りで、ムリして、フラィト便の荷物の重量オーバーを避けるため、一冊の文庫本を持參してリゾートライフの合間に精読することにしていた。この前も書いたように、この年でアロハシャツ姿で、三亜のゴールデンビーチを散策するのは様にならないので、ビーチ‐パラソルの下で読書三昧にふけるのが主であった。ところで、今年は海南島大開発の號令が下ったので、どういうインパクトがあるのかもこの目で見て來ようという気持ちで出掛けていった。
これまでのところ、外國からの観光客もかなり來ているが、ロシアとウクライナなど寒い北國の人たちが多いようで、中國人も主に東北地區の氷點下二十度の厳寒を避けて來た人たちが多數を占めている。これは海南島が変わろうとする序奏ともいえるものである。序奏が終われば、第一楽章が始まる訳であり、今回中國の政策決定は第一楽章の始まりを告げるものといえよう。
どんな大きなプロジェクトも、二十年、三十年経てば文筆で生計を立てている評論家諸氏に評価されることは避けて通れない。いや、そういう営為があるからこそ次にさらに良いプロジェクトが構想されることも可能となるのである。
では、海南島は三十年後にどうなっているだろうか。もしも一人の人間がこの油絵を畫き上げることになるなら、十數億の中國人をうーんとうならせるすばらしい絵を畫き上げることも不可能ではない。しかし、これほどの面積のスペースの大開発となると、全國各地からデべロッパーが乗り込んでくるし、世界各國、各地域の業者もビッグチャンスをねらっている。