李家祺＝文

　春の中國は一面に新緑が広がる。もし森を「地球の肺」に例えるなら、草原は「地球の肌」といえるだろう。

　中國は草原資源の大國だ。12年以降、中國は生態(tài)保護(hù)修復(fù)の重要プロジェクトに力を入れ、國土の緑化を科學(xué)的に推進(jìn)することによって、草原の生態(tài)を回復(fù)し続けてきた。「２０２３年中國國土緑化狀況公報(bào)」のデータによると、中國の年間植草の面積は23年に４３７萬９０００?に達(dá)し、そのうち、人工植草の面積は１０５萬４０００?で、改良した草原の面積は３３２萬５０００?に達(dá)した。

　黒い砂地が良質(zhì)な牧草地に

　「私は草原で育ったので、草原を守り、この黒い砂地を緑にしなければなりません」。夜が明けると、青海省ゴロク（果洛）チベット（蔵）族自治州達(dá)日県窩賽郷の草原管理?保護(hù)員の砂群さんは家を出て、一日の巡視を始めた。

　平均標(biāo)高４２００?という達(dá)日県は、黃河の源となる重要な水源保水地である。だが、過放牧や気候変動(dòng)などの多重的な原因の影響で、かつて美しかったこの高冷草原は次第に荒れ、黒褐色のまだらな地肌がむき出しの「黒い砂地」になってしまった。

　こうした現(xiàn)狀を改善するため、近年、達(dá)日県では生態(tài)管理と保護(hù)を第一の任務(wù)とし、草原の生態(tài)修復(fù)活動(dòng)を積極的に推し進(jìn)めている。

　「見てください。昔あの山の斜面はネズミの穴だらけで、砂地になりかけていたのですが、今では草がよく生えていますよ」と、砂さんは言い、近くに広がる緑を指した。

　達(dá)日県は17年、退化草地総合管理試験區(qū)のモデル事業(yè)を?qū)盲背訾俊？茖W(xué)研究チームの技術(shù)指導(dǎo)の下、達(dá)日県は黒い砂地を修復(fù)する経験を徐々に積み重ね、全國の高冷牧草地の修復(fù)事業(yè)の手本となった。

　現(xiàn)地の優(yōu)秀な品種の草を複數(shù)選び、これを組み合わせて実験して植生の定著性を高めたり、混合品種の種まきや調(diào)合施肥などの技術(shù)を総合的に応用したりして黒い砂地を修復(fù)した。こうした一連の効果的な措置によって、減少した草原は徐々に昔のうっそうとした緑を取り戻していった。

　「これは不織布です。土壌の溫度と濕度を保つことができるので、これさえあれば若い苗もしっかり根を張ることができます。芽が出たら、この不織布はゆっくり風(fēng)化していきます」と達(dá)日県自然資源?林業(yè)草原局の賀文靖副局長は話し、丘の斜面を覆っている緑色のフィルムを指差した。不織布を使った栽培方法なら、牧草の活著率を30％から80％以上に高めることができる。

　昨年７月までに、達(dá)日県は計(jì)２４６萬３００ムー（約１６４０平方?）の黒い砂地を修復(fù)し、牧草の平均的な高さは30?以上に達(dá)した。また天然の草地での草の平均生産量は１ムー當(dāng)たり２１３?を超え、かつての黒い砂地は、今では緑の草が敷き詰められて新しい命の旋律が草原に響き渡っている。

　緑化と増収のウインウイン

　內(nèi)蒙古自治區(qū)通遼市ザルト旗のアルフンドラン草原は、毎年５月になると最も美しい季節(jié)を迎える。広大な草原には新緑が果てしなく続き、野生の小動(dòng)物が出沒するのを見かける。だが10年余り前、ここの風(fēng)景は今とは全く違っていた。

　「昔は人々の生態(tài)保護(hù)に対する意識が今より低かったのです。誰もが牛や羊を飼えば飼うほど金を稼げると考えていました。この草原がこれほど多くの牛や羊を受け入れられるかどうかなんて、考えてもいませんでした。ところが草が生えなくなり、牛や羊が腹をすかし、牧畜も稼げなくなりました」と、元放牧民のウユン?アオリゲレさんは振り返った。

　長年の過放牧が招いた草原の急速な退化や、複數(shù)の河川の斷流、放牧収入の年々の低下という厳しい狀況に直面。ザルト旗では長期的な將來に著目し、「生態(tài)移民」戦略の実施を決意した。

　ザルト旗の下のアルフンドラン鎮(zhèn)では13年、「生態(tài)移民」プロジェクトをスタートさせ、11カ所の村から７８９世帯総計(jì)２１１６人を相次いで移住させ、80萬ムー（約５３３平方?）の無人無家畜地帯と３６０萬ムー（約２４００平方?）の連続した集中生態(tài)機(jī)能區(qū)を構(gòu)築した。

　長期にわたる放牧?開墾禁止令による保護(hù)と自然修復(fù)を経て、アルフンドラン草原は鮮やかな「変身」を遂げた――枯れた川に再び水が流れ始め、牧草の成長は年々良くなり、アカシカやキツネなど10種類余りの獣類とアネハヅルやソウゲンワシなど20種近くの鳥類が再び草原に姿を現(xiàn)した。

　生態(tài)移民の後、アオリゲレさんの家族は通遼市內(nèi)に移住し、自身も地元の管理?保護(hù)ステーションのスタッフになった。「今は仕事もあるし、市內(nèi)に団地の部屋も持てて以前よりずいぶん生活條件が良くなりました。車も買ったし、全て今まで想像もできなかったことです」と、アオリゲレさんはほほえんだ。

　農(nóng)民?放牧民が草原保護(hù)に積極的に參加するよう、11年以降、中國は內(nèi)蒙古やチベット、新疆など13の主な草原?牧畜區(qū)がある省?自治區(qū)では、草原生態(tài)の保護(hù)?補(bǔ)助?奨勵(lì)政策を?qū)g施。牧畜民の草原での放牧禁止の展開と、草と家畜のバランスを取る措置の実施に対し、一定の奨勵(lì)?補(bǔ)助金を與えている。これは、現(xiàn)有する草原への投資規(guī)模が最も大きく、影響範(fàn)囲が最も広く、農(nóng)牧民が最も直接的な恩恵を得られる政策である。

　21年に発表された「國務(wù)院弁公庁の草原保護(hù)と修復(fù)の強(qiáng)化に関する若干の意見」では、中國の草原保護(hù)?修復(fù)について段階的な目標(biāo)が示された。それによると、25年までに草原の総合植生カバー率を約57％に安定させ、35年までに草原の同カバー率を約60％に安定させる計(jì)畫だ。

　將來、草原には「天蒼蒼、野茫茫、風(fēng)吹草低見牛羊」と古詩に描かれてあるように、「空はどこまでも青く、草原は果てしなく広がり、風(fēng)が吹いて草が低くなびくと、放牧された牛や羊の姿が現(xiàn)われる」という美しい風(fēng)景がさらに増えていくだろう。

　「人民中國インターネット版」2024年5月14日