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平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する中日共同宣言

日本國政府の招待に応じ、江沢民中華人民共和國主席は、一九九八年十一月二十五日から三十日まで國賓として日本國を公式訪問した。この歴史的意義を有する中國國家主席の初めての日本訪問に際し、江沢民主席は、天皇陛下と會見するとともに、小渕恵三內閣総理大臣と國際情勢、地域問題及び日中関係全般について突っ込んだ意見交換を行い、広範な共通認識に達し、この訪問の成功を踏まえ、次のとおり共同で宣言した。

  一

雙方は、冷戦終了後、世界が新たな國際秩序形成に向けて大きな変化を遂げつつある中で、経済の一層のグローバル化に伴い、相互依存関係は深化し、また安全保障に関する対話と協力も絶えず進展しているとの認識で一致した。平和と発展は依然として人類社會が直面する主要な課題である。公正で合理的な國際政治?経済の新たな秩序を構築し、二十一世紀における一層揺るぎのない平和な國際環境を追求することは、國際社會共通の願いである。

雙方は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、內政に対する相互不干渉、平等及び互恵、平和共存の諸原則並びに國際連合憲章の原則が、國家間の関係を発展させる基本準則であることを改めて確認した。

雙方は、國際連合が世界の平和を守り、世界の経済及び社會の発展を促していく上で払っている努力を積極的に評価し、國際連合が國際新秩序を構築し維持する上で重要な役割を果たすべきであると考える。雙方は、國際連合が、その活動及び政策決定プロセスにおいて全加盟國の共通の願望と全體の意思をよりよく體現するために、安全保障理事會を含めた改革を行うことに賛成する。

雙方は、核兵器の究極的廃絶を主張し、いかなる形の核兵器の拡散にも反対する。また、アジア地域及び世界の平和と安定に資するよう、関係國に一切の核実験と核軍備競爭の停止を強く呼びかける。

雙方は、中日両國がアジア地域及び世界に影響力を有する國家として、平和を守り、発展を促していく上で重要な責任を負っていると考える。雙方は、中日両國が國際政治?経済、地球規模の問題等の分野における協調と協力を強化し、世界の平和と発展ひいては人類の進歩という事業のために積極的な貢獻を行っていく。

  二

雙方は、冷戦後、アジア地域の情勢は引き続き安定の方向に向かっており、域內の協力も一層深まっていると考える。そして、雙方は、この地域が國際政治?経済及び安全保障に対して及ぼす影響力は更に拡大し、來世紀においても引き続き重要な役割を果たすであろうと確信する。

雙方は、この地域の平和を維持し、発展を促進することが、両國の揺るぎない基本方針であること、また、アジア地域における覇権はこれを求めることなく、武力または武力による威嚇に訴えず、すべての紛爭は平和的手段により解決すべきであることを改めて表明した。

雙方は、現在の東アジア金融危機及びそれがアジア経済にもたらした困難に対して大きな関心を表明した。同時に、雙方は、この地域の経済の基礎は強固なものであると認識しており、経験を踏まえた合理的な調整と改革の推進並びに域內及び國際的な協調と協力の強化を通じて、アジア経済は必ずや困難を克服し、引き続き発展できるものと確信する。雙方は、積極的な姿勢で直面する各種の挑戦に立ち向かい、この地域の経済発展を促すためそれぞれできる限りの努力を行うことで一致した。

雙方は、アジア太平洋地域の主要國間の安定的な関係は、この地域の平和と安定に極めて重要であると考える。雙方は、ASEAN地域フォーラム等のこの地域におけるあらゆる多國間の活動に積極的に參畫し、かつ協調と協力を進め、理解の増進と信頼の強化に努めるすべての措置を支持することで意見の一致をみた。

  三

雙方は、中日國交正常化以來の両國関係を回顧し、政治、経済、文化、人の往來等の各分野で目を見張るほどの発展を遂げたことに満足の意を表明した。また、雙方は、目下の情勢において、両國間の協力の重要性は一層増していること、及び両國間の友好協力を更に強固にし発展させることは、両國國民の根本的な利益に合致するのみならず、アジア太平洋地域ひいては世界の平和と発展にとって積極的に貢獻するものであることにつき認識の一致をみた。雙方は、中日関係が両國のいずれにとっても最も重要な二國間関係の一つであることを確認するとともに、平和と発展のための両國の役割と責任を深く認識し、二十一世紀に向け、平和と発展のための友好協力パートナーシップの確立を宣言した。

雙方は、一九七二年九月二十九日に発表された中日共同聲明及び一九七八年八月十二日に署名された中日平和友好條約の諸原則を遵守することを改めて表明し、上記の文書は今後とも両國関係の最も重要な基礎であることを確認した。

雙方は、中日両國は二千年余りにわたる友好交流の歴史と共通の文化的背景を有しており、今後ともこのような友好の伝統を受け継ぎ、更なる互恵協力を発展させることが両國國民の共通の願いであるとの認識で一致した。

雙方は、過去を直視し歴史を正しく認識することが、中日関係を発展させる重要な基礎であると考える。日本側は、一九七二年の中日共同聲明及び一九九五年八月十五日の內閣総理大臣談話を遵守し、過去の一時期の中國への侵略によって中國國民に多大な災難と損害を與えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した。中國側は、日本側が歴史の教訓に學び、平和発展の道を堅持することを希望する。雙方は、この基礎の上に長きにわたる友好関係を発展させる。雙方は、両國間の人的往來を強化することが、相互理解の増進及び相互信頼の強化に極めて重要であるとの認識で一致した。

雙方は、毎年いずれか一方の國の指導者が相手國を訪問すること、北京と東京に両政府間のホットラインを設置すること、また、両國の各層、特に両國の未來の発展という重責を擔う青少年の間における交流を、更に強化していくことを確認した。

雙方は、平等互恵の基礎の上に立って、長期安定的な経済貿易協力関係を打ち立て、ハイテク、情報、環境保護、農業、インフラ等の分野での協力を更に拡大することで意見の一致をみた。日本側は、安定し開放され発展する中國はアジア太平洋地域及び世界の平和と発展に対し重要な意義を有しており、引き続き中國の経済開発に対し協力と支援を行っていくとの方針を改めて表明した。中國側は、日本がこれまで中國に対して行ってきた経済協力に感謝の意を表明した。日本側は、中國がWTOへの早期加盟実現に向けて払っている努力を引き続き支持していくことを重ねて表明した。

雙方は、両國の安全保障対話が相互理解の増進に有益な役割を果たしていることを積極的に評価し、この対話メカニズムを更に強化することにつき意見の一致をみた。

日本側は、日本が中日共同聲明の中で表明した臺灣問題に関する立場を引き続き遵守し、改めて中國は一つであるとの認識を表明する。日本は、引き続き臺灣と民間及び地域的な往來を維持する。

雙方は、中日共同聲明及び中日平和友好條約の諸原則に基づき、また、小異を殘し大同を求めるとの精神に則り、共通の利益を最大限に拡大し、相違點を縮小するとともに、友好的な協議を通じて、両國間に存在する、そして今後出現するかもしれない問題、意見の相違、爭いを適切に処理し、もって両國の友好関係の発展が妨げられ、阻害されることを回避していくことで意見の一致をみた。

雙方は、両國が平和と発展のための友好協力パートナーシップを確立することにより、両國関係は新たな発展の段階に入ると考える。そのためには、両政府のみならず、両國國民の広範な參加とたゆまぬ努力が必要である。雙方は、両國國民が、共に手を攜えて、この宣言に示された精神を余すところなく発揮していけば、両國國民の世々代々にわたる友好に資するのみならず、アジア太平洋地域及び世界の平和と発展に対しても必ずや重要な貢獻を行うであろうと固く信じる。

(一九九八年十一月二十六日)

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