福田元首相と蔡院森氏
しかし、蔡氏はきわめて謙虛で物腰も低い。「通訳がうまいと言われて恐縮します。クライアントからの信頼であり、仕事に対する自信になります」。蔡氏はそう言うと、古ぼけた黒いかばんの中から小さなノートを取り出した。「最初の方に書いてあるには、うまく訳せなかった文やフレーズです。忘れないようにノートにとってあります。次にはもっとうまく訳せるようにします。後ろの方には日本語の専門用語をのせてあります」さらに蔡氏は単語を系統(tǒng)立てて覚えるために、政治、経済、軍事などの數(shù)十の分野の専門用語に関する特別の単語帳も作っているという。
ロープの上でダンス同時通訳というと高級な仕事と思われるが、その過程での苦労はあまり知られていない。蔡氏によれば、同時通訳の仕事は、“ロープの上でダンスする”ようなものだという。また半分冗談に、同時通訳の仕事は“高大上“ともいう。「緊張が高く、プレッシャーが大きく、品質追求に上限がない」ということだそうだ。同時通訳の仕事はブースの中で行なうが、國內の同時通訳で使用される設備はたいていどれも簡単で狹い。ブースの中にエアコンはなく、夏は暑いのを冬は寒いのを長時間我慢しなければならない。通訳の仕事は音聲に対する要求が高い。しかしマイクから音が出ないことや會場からの攜帯電話の音が邪魔することは珍しいことではない。このほか會議の時間が延長したり、翻訳原稿が間に合わなかったりと、現(xiàn)場ではさまざまなトラブルが発生する。