1986年出版の自身の自伝「MADE IN JAPAN」で、ソニーの共同設立者である盛田昭夫氏は、日本が工業大國へと発展していったことについて「アメリカが弁護士を育てるのに忙しくしていた頃、私たち日本は、エンジニアの教育に忙しかった」と述べた。
25年前、日本企業とプロフェッショナルで勤勉なエンジニアたちは、世界経済を仕切っていた。
1990年代、バブルの崩壊により、彼らの影響力は徐々に弱まった。しかし、今日、日本の企業は依然として先進的な科學技術を振りかざし、韓國や臺灣との競爭で優位に立っている。
日本の弁護士は未だに多いとは言えないが、エンジニアの數も昔には及ばない。日本の経済産業省が2010年に行なった調査によると、調査に協力した企業のうち2/3が、不景気で就職率が下がっているなか、高い技術力を持ったエンジニアは不足していると答えた。
ノルウェーで行なわれている「科學教育研究:ROSE(the Relevance of Science Education)研究」によって、世界25カ國の科學教育に対する姿勢がわかった。調査結果によると、他の國に比べ、日本は「エンジニアとして仕事がしたい」と考える中學生の數が最も少なかった。
日立製作所の中西宏明社長は「學生たちが數學や科學に関する分野に興味を示さなくなった。今は大卒でも、自分たちが求めているような技術を持っている者はいない」とため息を漏らした。
エンジニア不足と人々の失業に対する不安は相反するように思われる。世界的に見ると、日本の4.9%の失業率はかなり低いほうである。しかし、世界が経済危機に陥る前の日本の失業率は4%もなく、盛田昭夫氏の時代には3%にも満たなかった。
また、失業率が企業の真の需要を見えなくしているという現狀もある。
2009年、世界経済危機が最も深刻な時、経済産業省は「潛在的失業率」は労働者の14%に及ぶと発表した。つまり、企業は900萬人もの過剰な労働力を抱えているわけだ。
また、「雇用保蔵」により、これらの潛在的失業者は未だに會社で収入を保証されている。雇用保蔵とは、不景気の時期に失業率を抑えるため、企業が解雇を制限することを言う。
日本の労働法によると、業績がどん底に落ちている會社以外は、他のいかなる會社も「強制」解雇は禁止されている。多くの企業ができる最も賢いやり方は、定年を早めて、過剰な労働力を減らすことだ。
日本企業は海外進出を狙っているが、15年來最高の円高による影響は大きい。ソニーなど一部企業は既に日本國內の工場を閉鎖している。しかし、中國やタイ、メキシコに工場を建てても、國內の生産能力は維持したいとの固い意志を持っている企業もある。
解雇制限のおかげで誰もが得をするかというと、そうでもない。現在、労働契約の1/3が臨時雇用であり、収入も低ければ、保障もない。また、勤続年數が長い古株の社員を解雇するのも困難で、若い新入社員の雇用はどんどん減っていく。
2010年12月、就職できた新卒はたったの7割で、過去最低のレベルだった。これは公式の失業率が更に上昇することを示唆するものである。
若者の間で、メーカーはもはや、安心できる就職先ではない。出版?情報サービスのリクルートが行なった調査によると、現在、學生に人気があるのは國営、或いは國営だったサービス企業である。そこには旅行社、鉄道會社、郵便局が含まれる。トヨタとソニーはそれぞれ、82位と77位だった。
そのため、企業は國外で技術研究者や製品開発者などを探すようになった。経済産業省の調査によると、2/3のメーカーが5年以內に、一部の研究開発事業を國外に移転する予定である。5年前まではこういった考えを抱く企業は、今の半分にも満たなかったという。
大手素材メーカーの日東電工は、メガネ不要の3Dホログラムディスプレイ用有機ポリマーの開発に成功した。これは、米カリフォルニア州?アリゾナ大學(University of Arizona)との共同研究によるものである。
日東電工のCTO(最高技術責任者)である表利彥氏は「アメリカの大學はレベルが高いため、會社の研究の拠點を置くことを決めた。また、アメリカの雇用形態は融通が利くので便利だ」と述べた。
表氏は「アメリカでは特定のプロジェクトにおいて、短期の労働契約で高いレベルの研究者を雇うことができるが、日本ではそうはいかない」と指摘した。
「中國網日本語版(チャイナネット)」2011年2月15日