文=コラムニスト?陳言
(2)損失を負うのは政府か、それとも國民か
40歳の平均年収757萬円、これは東電の一般職員の収入で、その他の上場大企業の職員より20%も高い。東電の威信は日本の約1/3の人口に24時間絶え間なく電気を供給できることによるものだけではない。その絶対的に高い収入も東電スタッフの誇りとなっている。
だが今となっては、東電の福島原発がチェルノブイリレベルの事故を起こし、一度に4つの原子爐に問題が生じ、大きな範囲に影響を及ぼしている。
「4つの原子爐は冷卻期間だけで10年前後を要し、その後ようやく廃爐段階に移ることができる。10年間の冷卻と原子爐の撤去、汚染物の埋め立て場所等、総額1兆円はかかる。」経済月刊誌『FACTA』の安部重夫編集長はこう語る。
現在、20キロ圏內の生産は完全に停止、20~30キロ圏內の住民も事実上、放射能汚染を受ける危険にさらされており、普段の生活ができない狀態だ。その外側數十キロ範囲でも農家の野菜や果物、畜産農家の乳牛、漁民たちの漁場等は全て停止しており、十數年以內は回復が難しい。阿部氏によれば、東電の賠償金は數兆円に上り、現在の東電の年間支出1000億円で計算しても、原発処理と、損害を受けた人々への補償を完了するまでに百年以上かかるという。
3月、三井住友銀行等は東電への2兆円に上る緊急融資を決定した。この金額で東電の賠償金の全てを賄うことはできないが、東電は當然その賠償義務から逃れることはできない。
東電の資産負債表を見た者によれば、2010年3月の時點で、東電の資産は13.2兆円、そのうちの2.6兆円が株式価値で、殘り10.6兆円は金融機関の融資や企業債券発行で得たものだという。東電の株式は一株2197円(2011年2月23日現在)から148円(2011年6月9日現在、6月20日の時點で304円まで回復した)にまで下落、その価値は1/10程度にまで落ちた。
一部の経済評論家は、東電を國有化すれば東電の賠償問題も解決できるとする。たとえ銀行等から借りてきた資金でも、東電が10兆円の資金を用意することは可能なはずだ。
しかし、日本大企業利益を代表する世論機関『日本経済新聞』の社説では、「企業を沒収し國有化することは、あってはならない」としている。もしそうなれば、三井住友銀行等が東電に融資した資金は水の泡となってしまう。
「電気代を上げ、稅収を増やし、全ての國民が東電事故のために一定の費用を負擔するという方法を選択すればいい。」日本の財界や政界には、こう主張する人が多い。
「國家賠償」がすでに日本世論の主流となっている。「もともと東電の火力発電部分を切り離し、東電には全力で原子力発電の損害賠償を行わせることもできたが、日本資本がその方法を選ぶことはない。」ある日本の経済學者は筆者にこう言う。國家賠償となれば、東電は何も困らなくなってしまう。
(3)30%の電力不足で更なる後退の可能性