■捲土重來に著手する小沢派勢力
輿石氏は當初、野田首相の要請を故意に「遠回しに」斷った。だが再三の誠実な招請に、他により良い候補者がいなければ喜んで引き受けると表明した。
小沢派にしてみれば、これは正に願ったりかなったりだ。民主黨の人事と財務の大権を再び身內が掌握しさえすれば、小沢氏らの黨內処罰問題をうやむやに終わらせられるのはもちろん、近い將來の小沢派勢力の捲土重來も期待できる。
実際、百戦錬磨で現在も黨員資格停止中の小沢氏は、黨代表選での敗北を受けて、すでに次の権力奪還工作に取り組み始めている。小沢氏は麾下の3グループ、つまり若手?中堅衆院議員からなる「一新會」、當選1回の衆議院議員からなる「北辰會」、參議院小沢派閥を1つの大グループにまとめるよう命じた。しかも自ら會長に就任し、直接指揮するつもりだ。言い換えるなら、黨內で一挙手一投足が決定的な影響を及ぼす地位を確保するため、これまで目立たぬようにし、派閥ではないかのように振る舞ってきた小沢派3グループが、銅鑼や太鼓を叩き、正々堂々と黨內最大派閥の旗印を掲げる準備を始めたのだ。
民主黨內の各小派閥や野黨は、小沢氏のこうした大きな動きを當然強く警戒しているが、この事実を受け入れるほかない。「過渡期の首相」である野田氏は特にそうだ。目下の最重要任務はまず順調に帆を上げることだからだ。
■「政経分離」を踏襲したどっちつかず外交
2009年のマニフェストを守るのか、それとも大幅に修正して自民?公明両野黨との合意の実行を図り、さらには「大連立」に突き進むのか。政治、経済、エネルギー、放射性物質など速やかな解決が不可欠な、山積する難題をどう処理するのか。現在、こうした問題で野田氏の頭はいっぱいなのかもしれない。
この點から見ると、自衛隊家庭と松下政経塾の丹念な特訓の下で、野田氏の血液にはタカ派の史観と政治哲學がとうに浸透しているとはいえ、予測可能な在任期間(2012年9月の黨代表選まで)に、野田氏がそれを敢えてあからさまに表に出すことはないかもしれない。
言い換えるなら、アジア隣國とのつきあいにおいて、野田氏に己を正しく知る賢さがあるのなら、余計な問題を招く政策を避け、経済ではアジア(特に中國)に頼らざるを得ないが、政治?軍事ではその反対という、鳩山?菅両內閣の「政経分離」のどっちつかず路線を踏襲するはずだ。