「一大勢力」であるアフリカ諸國は自ずと軽視できない。G7広島サミットの開幕まで1カ月を切り、岸田文雄首相は4月29日から5月5日にかけて自ら地球を半分跨ぎ、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークの4カ國を歴訪した。岸田氏は就任後初のアフリカ歴訪を開始し、日本の首相のアフリカ訪問は7年ぶりとなった。
岸田氏が今回選んだ4カ國はアフリカの北?西?東?南の四方向に位置し、いずれも地域の代表的な國だ。エジプトは政治大國で、ガーナは西アフリカの門戸で、ケニアは東アジア経済の中樞で、モザンビークは資源が豊富だ。岸田氏がこの4カ國を支柱とし、アフリカで存在感をアピールしようとしたことは明らかだ。岸田氏はアフリカで「善意」を存分に示し、アフリカのインフラや安全などの悩ましい問題の解消に協力しようとした。ところが出発前の「政治表明」にせよ訪問中の「洗脳的」な説教にせよ、アフリカに友好的な姿勢を示す日本の政治的な「計算」は、アフリカが最も関心を寄せる経済協力を遙かに上回っていた。
岸田氏の政治的な「計算」
政治面でアフリカを極力抱き込もうとした。岸田氏は出発前に、ウクライナ問題及びその他の國際問題についてアフリカ諸國と意見交換し、會談の結果により「G7広島サミットの議論を豊かにする」ことでアフリカ諸國への尊重を示すと表明した。しかしこれは心からの願いではなく、実際には強いられてのことだ。
まずウクライナ危機の勃発後、アフリカの多數の國が中立を維持し、対露制裁に加わらなかった。日本と西側諸國はこれに大いに驚き、初めてアフリカ諸國の集団としての力を感じた。岸田氏の今回の訪問の目的の一つは、アフリカ諸國に立場表明を強い、かつ5月19?21日に開かれるG7サミットの気運を高めることだ。日本政府はその意図をまったく隠そうとしなかった。岸田氏は「法の支配に基づく國際秩序」を取り戻すと繰り返し表明し、アフリカ諸國がウクライナ危機をめぐり態度をはっきり示すことを願った。同時に日本は「G7とグローバルサウスの架け橋になる」と表明した。
その一方で、日本が「政治大國」の地位を占めるためにはアフリカの「大票田」が必要だ。日本は長年に渡り安保理改革にこだわり、常任理事國入りを目指してきた。アフリカ54カ國の國連における票數は全體の4分の1以上で、日本が取り込もうと躍起になる重要勢力だ。
経済支援は掛け聲ばかりで実利が乏しい。日本とアフリカの雙方の會談は、インフラ、安全、エネルギー、食糧、醫療などのアフリカの重大な現実的問題が焦點となった。しかしその內容は新鮮味が欠けていた。
日本企業の代わりにアフリカ進出の道を切り開く。ウクライナ危機の勃発後、日本は積極的にロシアに反対し、ロシアへのエネルギーの依存を減らした。これを背景とし、アフリカの豊富なエネルギー?鉱産資源が日本にとって魅力的になった。対アフリカ関係の強化、経済協力の拡大の必要性も日増しに高まっている。
空振りに終わる可能性も
全體的に論じると、岸田氏の今回の歴訪は、日本の対アフリカ政策における実用主義と機會主義から脫することがなかった。西側のためにアフリカを抱き込み、G7に協力し、日本企業のためにアフリカ市場を切り開くことが、その具體的な現れだ。歴訪の効果を見ると、複數の支援協定に署名した他、日本はガーナに稲育種技術を譲渡し、人的資源の訓練を提供することを約束した。またケニアとモザンビークのエネルギー開発促進で合意に至ったぐらいで、岸田氏の今回のアフリカ歴訪は収穫が多くなかった。
日本とアフリカの雙方が調整を続けるウクライナ危機について、ガーナを除く3カ國は日本に明確な反応を示さず、エジプトに至ってはまったく反応しなかった。日本メディアさえ「岸田氏はウクライナに対する全面的な支持を得られなかった」と明言したほどだ。岸田氏の努力が自國メディアから支持されていないことが分かる。アフリカの多くの國は終始、非同盟の立場を堅持しており、立場表明をしたがらない。これは米國や歐州諸國の指導者のアフリカ訪問でも何度も検証されており、日本も例外ではない。
アフリカが切実に必要としている発展支援についても、日本側は口先ばかりで実利が伴わない。近年の日本の対アフリカ支援を振り返っても、日本は約束を破る可能性がある。これはアフリカの人々とメディアが岸田氏の今回の歴訪に対して冷ややかである理由を説明できる。(筆者?鐘卓鋭中國現代國際関係研究院アフリカ研究所/張垚中國現代國際関係研究院北東アジア研究所)
「中國網日本語版(チャイナネット)」2023年5月10日