馬場(chǎng)公彥＝文?寫真

一日の仕事を終え、燈ともし頃になってからの癒やしは、酒杯を傾け見るテレビ。それも決まって里山やひなびた溫泉や場(chǎng)末の居酒屋を探訪する、ゆるーい旅番組だ。 

中でもローカル線の旅は見逃さない。日本には鉄道マニアが多く、乗り鉄、撮り鉄、呑み鉄まである。鉄道民営化以降、赤字ローカル線が次々に廃線になった。のんびりした各駅停車の旅、山間の秘境駅、下車して味わった地元の人情や特産など、懐かしい記憶を求めて、廃線や廃駅跡を歩く鉄道ファンも多い。 

日本で失われつつあるローカル鉄道の風(fēng)情を、中國(guó)でなら味わえるかも、あわよくば車窓からの風(fēng)景をＳＮＳにアップしてアクセス數(shù)を稼いでやろう……そんな野心を起こして、北京を起點(diǎn)にローカル線探訪を試みた。 

結(jié)果からいえば、期待外れ。まず當(dāng)然といえば當(dāng)然なのだが、北京は天下の首都。市內(nèi)に東西南北のほか複數(shù)のターミナル駅を擁し、発著する路線は北京と主要都市をつなぎ、省をまたぐ長(zhǎng)距離だ。チベット自治區(qū)のラサまでも四十?dāng)?shù)時(shí)間かけて走る直通列車も出ている。 

北京から長(zhǎng)沙まで旅行したときのこと、乗った寢臺(tái)列車の終點(diǎn)は海南島の三亜で、こちらも所要時(shí)間は39時(shí)間。待てよ、海南島に渡る海峽はどうやって移動(dòng)するのだろう、きっと北海道―本州間のように、函館で下車して青函連絡(luò)船に乗ってから、青森から別の列車に乗り換えるのだろうと思っていたら、列車ごとレール付きの巨大なフェリーに載せて海南島に運(yùn)ぶのだという。 

とはいえ、短距離路線の列車ならあるだろうと見込んで、時(shí)刻表で調(diào)べようとしたら、どの駅の売店にも時(shí)刻表は売られていない。旅行アプリで調(diào)べるほかなく、アプリは明確な目的地のある場(chǎng)合は便利だが、路線全體を調(diào)べたり、停車駅や時(shí)刻を比較しようとする用途には向かない。 

ようやく北京市內(nèi)の懐柔北行きを見つけた。胸躍らせて北京北駅に行くと、ホームに停車していたのは成田エクスプレス（ＮＥＸ）のようなモダンな電車で、通勤快速列車。河北省の聞いたことのない駅が終著の各駅停車の列車を見つけた。同じく北京北駅に行くと、ごく普通の高鉄（高速鉄道）で、時(shí)速２５０?、30分で市內(nèi)北端の昌平駅に著いた。 

しかも懐柔北駅も昌平駅も、いずれも北京市內(nèi)だというのに、駅前には日本のどんなローカル駅でもあるような、観光案內(nèi)?郵便局?本屋?簡(jiǎn)易旅館?商店街はない。その駅舎も全國(guó)どの駅も同じデザイン、駅前のスーパーに売られている食品も大同小異で、地方ならではの駅弁を食べ比べる興趣を満たしてくれない。早朝から出掛けた昌平駅では、朝ご飯は地元のローカル飯をと意気込んで腹を空かせていったところ、駅前はだだっ広い空き地が広がるだけ。運(yùn)転手の乗っていない路線バスが１臺(tái)、人待ち顔に駐車していた。１軒だけあったスーパーに隣接する食堂で、いつもと同じ包子とワンタンを食べた。日本の鉄道用のような、駅を拠點(diǎn)に発展した近代都市の歴史が、ここではスキップされている。 

とはいえ、中國(guó)鉄路ならではの良さもある。高鉄が全土を縦橫無盡に張り巡らされていながら、在來線の寢臺(tái)列車?夜行列車を減便?廃止せず、ほぼ満席の乗客をゆっくりと運(yùn)んでいる。そこには車両ごとに硬座（二等車）?軟座（一等車）?無座（自由席）?硬臥（二等寢臺(tái)）?軟臥（一等寢臺(tái)）?高級(jí)軟臥（グランクラス）と乗客のニーズに合わせた座席が提供されている。日本の列車にはもはやない餐車（食堂車）もある。ただし利用客は少なく、もっぱら列車乗務(wù)員の賄い飯用に使われているようだ。 

先日、河北省石家荘―保定間を硬座に乗って移動(dòng)した。硬座での旅は窮屈だが、生活感がにじみ出ていて味わい深い。多くの荷物を抱えた出稼ぎ労働者、ずっと車窓を眺めている攜帯電話を持たない田舎のおじいさん、無言で肩を寄せ合う若い農(nóng)民風(fēng)夫婦、帰省で高鉄に乗れない學(xué)生など、乗り合わせた客たちの表情やしぐさを眺める。人生のドラマをあれこれ妄想しながら。

中國(guó)鉄道の長(zhǎng)距離列車には必ず連結(jié)されている食堂車。食事は座席で弁當(dāng)やカップ麺という乗客が多く、列車が満?jiǎn)Tでも意外と穴場(chǎng)

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