福州路にある公衆電話スタンド(撮影?徐明睿)。
今や街中で「公衆電話」を見かける機會はほとんどなくなってしまったものの、上海市中心を走る福州路には、現金しか使えない公衆電話スタンドが今でもある。通話料は市內なら3分間で4角(約6.5円)。その公衆電話スタンドを経営する瀋玉琇さん(78)は取材に対して、「経営してもう27年になる」と話した。中國新聞網が報じた。
瀋さんは1993年に仲間數人と路地の入り口にあるこの場所を借り受け、公衆電話スタンドの商売を始めた。そして、1996年に亡くなった夫が生前言い殘していた、「この公衆電話スタンドを守り続けてほしい」という約束を守るため、瀋さんは毎日、時間通りにスタンドにやって來ては、12時間そこに座り、「勤務」している。
用事などで瀋さんがスタンドを離れなければいけないような時は、近所に住む親切な人が店番を手伝ってくれるという。近所に住む男性?瀋さんは取材に対して、「彼女が病院に行ったり、旅行に行ったりする時は、僕がいつも店番をしている」と話す。
1970年代頃から、上海にはほとんどの路地の入り口に公衆電話スタンドができ、攜帯電話はおろか、固定電話すら各家庭にあまりなかった當時の人々の生活において不可欠な存在となった。以前は仲間5人で経営したものの、今では瀋さん一人だけ。皆がポケベルを使っていた時代は、メッセージを送るにも、メッセージを受けてから折り返し電話をするにも、公衆電話が不可欠だったため、公衆電話スタンドが一番忙しい時代だった。瀋さんは、「當時は1ヶ月で5千元(1元は約16円)の収入があり、電話をかけるための列ができていたほどだった。今では並ぶ人もおらず、1日の売上も今日のように5元ほど」と感慨深げに當時を振り返った。
瀋玉琇さんの帳簿(撮影?徐明睿)。
公衆電話を使う人は少なくなったものの、瀋さんは「仕事」をさぼることなく、毎日、暇をみつけてはアルコールで濕らせた雑巾で、何度もオレンジ色の公衆電話3臺を拭いている。しかし、瀋さん自身も攜帯電話を使っており、今や公衆電話を使う必要がある人というのは、往々にして助けを必要としている場合であることは、瀋さんもわかっている。そのため、お金を持ち合わせていない人が電話をかけるためにやって來た時などは、喜んで助けているという。「攜帯電話を忘れたという人もいれば、攜帯電話の電池が切れたという人もいる。大した金額でもないので、気にすることでもない」と瀋さん。
そして、「健康である限り、いつまでもここに來て、一つの時代のなごりを守っていくつもり。今、私の最大の望みは健康であること」と笑顔で語った。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年12月11日