経営學上の用語で、日本語ですと「革新」と訳される「Innovation」ですが、中國語では「創新」と訳されますね。いずれの國においても、僕としては、まぁただの流行りもののbuzzword(専門用語のようではあるが、あまり定義のしっかりしていない言葉)のようなものとして定著しつつあるのかなぁと思っています。
それはそれで、使い易い言葉として社會に認知されていくのであれば、俗に言う日本での「オトナ語」の用法としていいものなのだとおもいます。
――――もともと、経済學用語であったり、経営學用語であったりしたものが、日本ではこうした「オトナ語」になっていくことが少なくありませんが、中國語と日本語でのこうした「オトナ語」の比較はあまりなさそうなので、こちらのブログでも、これからちょこちょこと書いてみたら面白いのではないかと思っています。――――
さて、それでは、イノベーションというオトナ語を見てみましょう!
「イノベーションを社內に起こすように全社一丸となって???」、「イノベーションが連続的に発生するような経営のために???」といった、なんとなく「良いもの」としてのかなーり曖昧な使われ方から、「イノベーティブな人材がむしろ組織効率を下げる」「イノベーション経営偏重主義からの脫卻」といったアンチテーゼを挙げてみて、なにかの改良點を模索している的なものまで、とりあえずイノベーションって使い易いよね、な感じで使われているような気がします(笑。
ちなみに、中國でも「創新中國」といわれたり、とくに企業の科學研究開発などでは、中國初のグローバルスタンダードを目指して???という「方針」に対して、このイノベーションという用語がつかわれたりしていますから、英語の意味に近いのではないでしょうか(中國のみなさんいかがですか??)。
根本的な議論にたちかえって、イノベーションとはなんぞや、と考えるわけですが、経営學でも、うーん、どれも確実に多くの學者の納得を得た定義というのはむずかしい気がします。もちろん、英語の原文で、その定義は數多く存在する中で、僕自身が、「これがちょうどいいんじゃないの?」というものもあるのですが、すべてのInnovativeな現象って何だろうと思い出すと、キリがなくなってしまい、言葉の迷路に入り込んでしまいます。
しかし、言葉の定義はともかく、現実的な組織運営上で、本當の意味でのイノベーションが企業にとって必要であることは、間違いないでしょう。いや、厳密には、イノベーションの定義そのものとして、「企業にとって根本的に必要であるもの」、としているわけなので、企業がイノベーティブであるのは當たり前ということもできます。そもそも、組織の最初期には起業家?創業家がイノベーションをおこした(おこそうとする)が為に、企業がうまれるということができますから、企業というのは、最初からイノベーティブなわけですね。ただ、この企業が生まれたときにはイノベーティブであったものが、だんだんと、イノベーティブというよりも、惰性的になり、外部環境(市場?需要)に適切に対応できなくなったり、単純に組織存続の意義が消失してしまうことから、業績悪化?社會需要からの乖離?企業倒産ということにもなってくるわけですね。
例えば、先日は、日本航空(JAL)が上場を廃止しましたが、イノベーションに関連していうならば、僕としては、もはや近年のJALには、一切のイノベーティブな活動を感じることができませんでした。積極的な新機體への投資しかり、財務體質健全化への強力なコストカットしかり、こうした強いイノベーティブな姿勢がありませんでしたよね。
イイノベーションの一つとして、「過去あった、今ある組織?狀況からまったく別のかたちに根本的に変化する」という意味があると思います。だから、ノベーションの意義として裏を返せば(前向きな革新という表の意義とは逆に)、新しく何かを生み出すだけということではなくて、巨大になってしまった企業體をバッサリ無駄な部位を排除するということも、イノベーションのひとつなのだろうと思います。
「イノベーティブ」という言葉が現在のオトナ語のように「成長?創造的革新」というイメージだけではなく、もう少し広範につかわれて、「イノベーティブたれ!だから、撤退、縮小も辭さない!」そんなイメージが広がると、「事業撤退?縮小的革新」というネガティブな戦術を、オブラートにつつんでくれるBuzzword?オトナ語として定著してくれるので、使い易い(特に小規模會議やミーティングなどで!)のではないかなぁと密かに思っています。
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
?チャイナネット? 2010年3月12日