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「中國脅威論」を乗り越えるために

人民中國  |  2023-03-30

「中國脅威論」を乗り越えるために。

タグ:中國脅威論

発信時間:2023-03-30 16:06:09 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

元NHKアナウンサー、ジャーリスト?木村知義=文

 春、4月。日本では、新學期を迎える子どもたち、社會人として一歩を踏み出す若者たちにとって、希望に胸を膨らませる新たなスタートの季節です。 

 中國はといえば、第14期全國人民代表大會を経て政府の陣容と政策実施の態勢を整え、経済はじめ社會の建設が「新たな段階」へと進む歴史的な時に立っていると言えるでしょう。3年に及んだコロナパンデミックという「難局」と中國共産黨第20回全國代表大會(第20回黨大會)から全人代へという二つの歴史的な畫期を越えて、中國は新たなスタートの春を迎えているというわけです。

 安全保障政策の大転換 

 しかし、私たちにとっては日本のこれからの在り方、さらに日中関係のこれからに深く関わる「重い問題」と向き合わざるを得ない狀況となっています。 

 昨年末、「防衛3文書」と総稱される「國家安全保障戦略」「國家防衛戦略」「防衛力整備計畫」が閣議決定され、岸田文雄首相自ら「日本の安全保障政策の大転換」と力を込めたことはすでによく知られるところです。年明けには岸田首相が訪米してバイデン大統領と會談。「共同聲明」でバイデン大統領は、先だって開催された日米外相?防衛相による「日米安全保障協議委員會」(2プラス2)における「合意」と合わせ、「日米同盟の現代化に向けて成し遂げた比類なき進展」と賞賛しました。敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、防衛費のGNP比2%への増額など、日本の新たな防衛力増強への取り組みを、いわば米國への「公約」とする重い意味をはらむものでした。 

 なによりも重要なことは、中國を「最大の戦略的挑戦」と位置付け、事実上中國を日米共同の「仮想敵」とする意味合いを強くしたことです。そして、その背景にいわゆる「臺灣有事」があります。臺灣有事がまさに「つくられた有事」論であることは本稿でも觸れたことがありますが、今回の「大転換」によってなし崩し的に「一つの中國」という日中國交正常化以來の日中関係における基本原則を揺るがしかねない事態に進む恐れを拭えないものとなっているのです。さらに注意しなければならないのは、日本社會において、「中國の脅威」を挙げて「防衛力強化」を目指す動きを一定程度支持する「空気」が広がっていることです。 

 これら全てが日中関係の発展を阻害する力として働くことは言うまでもありません。米中対立が深刻化する中で、世界で起きることの全てが「中國の脅威」という文脈で語られ、中國の抑止へという動きがますます先鋭化する局面を迎えています。突き詰めて言えば、中國の「脅威」というものをどう認識し、どう向き合うのかが鋭く問われる時代を迎えているというわけです。 

 中國の世界への向き合い方 

 そこで、中國は今どのような認識に立ってこれからの時代を歩もうとしているのかを確かめておくことが不可欠になります。中國の行く道を領導する第20回黨大會の報告(「報告」)を見てみましょう。 

 「報告」の「14?世界の平和と発展を促進し、人類運命共同體の構築を推進する」では、「中國は各國の主権および領土保全を尊重し、國家は大小?強弱?貧富にかかわらず一律に平等であるという立場を堅持し、各國の人々が自主的に選択した発展の道と社會制度を尊重し、斷固として一切の覇権主義と強権政治に反対し、冷戦思考に反対し、內政干渉に反対し、ダブルスタンダードに反対する。中國は防御的な國防政策をとっており、中國の発展は世界平和の勢力の拡大につながっている。中國はどこまで発展しても、永遠に覇権を唱えることはなく、永遠に拡張をすることはない」と語っています。 

 「臺灣」については、ここに先立つ「13?『一國二制度』を堅持?整備し、祖國の統一を推進する」において、「一つの中國の原則と『九二年コンセンサス』を堅持し、それを踏まえて、臺灣の各黨派、各業界、各階層人士と、両岸関係?國家統一について幅広く踏み込んで協議し、共同で両岸関係の平和的発展と祖國の平和的統一のプロセスを推進していく」とした上で、「われわれは、最大の誠意をもって、最大の努力を盡くして平和的統一の未來を実現しようとしているが、決して武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必要な措置をとるという選択肢を殘す」としていますが、「その対象は外部勢力からの干渉とごく少數の『臺灣獨立』分裂勢力およびその分裂活動であり、決して広範な臺灣同胞に向けたものではない」と明確にしています。 

 果たしてこれが中國は「脅威」だとなるのか、言うまでもないでしょう。しかし、「これは言葉だけで信用できない」という人たちがいることも否定できません。 

 「脅威」とは何か 

 そこで、百歩譲って、では、それを乗り越えるには防衛力を増強して対抗するしか道はないのでしょうか。何が言いたいのかというと、「中國脅威論」を超克するために、「脅威とは何か」という命題と向き合い考えてみようというわけです。 

 「脅威」は、脅威=能力×意図という計算式で表すことができるというのが安全保障を考える際の定式となっています。つまり、脅威とは無前提にある絶対的なものではなく、対象の能力と意図についての分析次第で変化するものだということです。さらに、一つの因子が巨大であっても、もう一つの因子を限りなくゼロに近づけることができれば、それは脅威とはならないということです。卑近な例を挙げれば、世界最大の軍事力(能力)を誇る米國を日本にとっての脅威と見なさないのは、日本に対する攻撃意図をゼロとしているからです。いかに巨大な能力といってもゼロと掛け合わせればゼロとなる、これは子どもでも分かる計算です。 

 ここから導き出される結論は重要です。相手の軍事力(能力)が強大な場合、どうすれば意図を限りなくゼロにできるのかという命題として存在しているということなのです。よって、能力(軍事力)に対して能力(軍事力)で対抗するというのは愚策というわけです。冷靜かつ論理的に考えれば、こうなるのです。 

 「中國脅威論」の超克 

 端的に言えば、中國の軍事力(能力)が強大であるとしても、それを脅威とさせない、すなわち中國の「攻撃」の「意図」を限りなく「ゼロ」に近づける構想力、すなわち日中関係をどうすれば良いものにしていけるのかの構想力が問われ、「外交の力」がなによりも重要になるのです。軍事をもって抑止、対抗しようという今回の「大転換」は、そのことへの努力の放棄を意味すると言っても過言ではありません。 

 さらに言えば、「中國脅威論」の超克という私たちにとっての重い課題は、日米同盟基軸のくびきから自由に世界を見つめ、考えるという深く、重い命題から逃げることなく「日本の外交の力とは」という問いと{しん?し}真摯に向き合う、そんな覚悟を迫られることでもあるのです。 

 日中関係を一歩でも二歩でも前に進め、アジアそして世界の平和と安定、発展を目指すために、こうした思考に立つ「新たなスタート」の春にすることを忘れてはならないと考えます。

 「人民中國インターネット版」2023年3月30日

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