勇猛果敢な「フカヒレ」
ツバメの巣とフカヒレがテーブルに並んでいない宴會は、それだけで低俗なものになってしまう。この二つの食品がここまで、中華料理で重要視されているは、中國が原産地ではないからかもしれない。ツバメの巣はタイが原産で、フカヒレで言えば、潮州付近でも採れるが、中國が消費しているフカヒレはほとんどが輸入に頼っており、なかでも日本からの輸入が一番多い。
フカヒレがここまで重んじられるのは、サメの猛々しい様を想起させるからだろうか。中國人がフカヒレを食べ始めたのには、ちゃんとした訳がある。昔、宮廷では鯉のヒレを使った料理が流行っていた。中國の鯉は日本のよりはだいぶ大きいが、それでは物足りなかったようだ。料理人たちは四方八方、ヒレがもっと大きい魚はないかと探し回った結果、サメに辿り著いたのである。
鯉は逆流にも負けずに力強く勇敢に前進するという言い伝えがある。端午の節句には、こいのぼりが大空にたなびいて、迫力満點だ。逆境に負けない鯉のパワーを自分のものにしたいと考えた人々は、鯉のヒレを食べるようになったのだろう。
魚の背ビレは中國語では「旗」と言う。戦國時代、日本の武將たちは背中に小さな旗を挿して、戦いに出た。勇猛なサメの背中にも立派な背ビレがあり、大海原を自由自在に泳いでいる。その勇ましい姿から旗をイメージする中國人の想像力はたいしたものである。